ホイール考
2016年 11月 19日
当店のオーダーフレーム『NAMBEI』を気に入ってくださり、既に3台の固定ギヤのシングルロードをオーダーされた名古屋在住のNさんという方がいらっしゃいます。
今回はスポークを新品に替えての組み直しですが、USEDホイールはリムに変な癖がついている事がありますが、このリムには変な癖もついておらず程度の良いものでした。
当店に集まる方の世話役をして下さっている誤字さんのホームページ『自転車三昧』でもNさんのオーダーにまつわる手記等が度々掲載されています。Nさんが名古屋の老舗ショップで『サンツアー・シュパーブ』のハブに『マビック・オロ10』28Hという30年ほど前のホイールを入手されたのをきっかけに『自転車三昧』でも『深遠な車輪の話』と言うコンテンツを展開されています。
そんな折、その名古屋のNさんが、入手されたくだんのホイールを私の元に持ち込まれ、「誰が組んだか分からないホイールは信用できないから組直してほしい」との事でお預かりしました。
さて、このオロ10というリム、私にとっても馴染みがあるリムで、大学時代から競輪選手になっても暫くはピストレーサーの街道練習用として使用していたリムで重さ310g、当時としては標準的な高級リムでした。
その後私の練習用リムは『フィアメ・ハードシルバー』へと変わりましたが、そういった素性の良いリムが普通に手に入っていた頃を懐かしく思いながら組み直しをしました。
持ち込まれたホイールは、そのパーツ構成からピストレーサーの街道練習用として80年代半ば以降に組まれたものと思われます。
素性の良いホイールというのは組めば分かります。
私自身は中学生の頃に初めて買ったピストレーサーのホイールを自分で組んで以来、ずっと自分で組んで実戦で使ってきましたが、ここ20年以上は競輪用リムか400g級リムを使ったホイールしか組んでいません。
競輪で使用される『アラヤ・ゴールド』のメーカー公表の重量は335gですので、オロ10の方が25g軽く、おまけにスポーク数も競輪用の36本に対して28本。
しかし、ホイール組の仕上げに行う『馴染ませ』と言って横方向に力を加える作業の際、競輪用リムより遥かに高い剛性感があり、改めてオロ10の素性の良さを感じました。
前文でオロ10のことを標準的な高級リムと表記しましたが、マビックにはスペシャル・サービス・ド・コルサいわゆる『SSC』という標準的でない超高級リムが存在していました。
当時ロード用のホイールでは、カンパのハブにSSCというのがマニア垂涎の組み合わせでした。
リムとしては後発だったカンパからも、後に『シグマ・パヴェ』というSSCに対抗するリムが出ましたがこちらはSSCよりやや重量があったと記憶しています。
現在、人気を二分するマビックとカンパのホイールですが、リムのマビックにハブのカンパ、とメーカーの伝統は今も引き継がれています。
ただ、今やリムにしろハブにしろその差は僅かですので選ぶ際に気にする程のことではないのですが、カンパのハブにマビックのリムのホイールがあったらいいのにと、好きなパーツを思うように組み合わせて使えた時代を懐かしく思ってしまいます。
さて、完組ホイールといえども店に入荷して来る時にはどのホイールにも必ずと言っていいほど僅かな振れやセンターの狂いがあります。
振れやセンターの狂いは、そのまま乗っていると抵抗が増えるばかりでなく、ホイール自体の素性も悪くなっていきます。当たり前ですが、当店ではすべて調整してお渡ししています。
by nambei
| 2016-11-19 10:00
| 日記